連載 感染症 Up to Date・43
結核対策の評価と質の向上に向けて
阿彦 忠之
1
1山形県山形保健所
pp.354-355
発行日 1999年4月10日
Published Date 1999/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901971
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世界保健機関(WHO)によれば,世界の結核は今,人類史上最大の流行をみせている。わが国でも1997年の結核罹患率が前年比で増加に転じ,大きなニュースとなった。しかし,昔からみれば患者数が桁違いに少なくなったので,「結核は克服された過去の病気」という意識が,国民にも医療従事者にも厚くこびりついてしまった。これが結核に対する油断と軽視,さらには患者発見の遅れを招き,院内感染を含めた集団感染の増加にもつながっている。
このような状況のなかで,地域で結核対策を推進する行政機関,とりわけ保健所は21世紀にどのような役割を果たすべきか。全国的に保健所の再編が進むなかで,結核についてはどのような機能を強化したらよいのだろうか。その答えとして筆者は,結核対策の「質の向上」がキーワードになると思っている。保健所は地域で行われている結核の予防から医療に至る各種対策の「質」を評価し,その改善を促す役割を果たさなければならない。結核の低蔓延化に伴い,結核対策の事業量が減少するのは歓迎すべきことだが,対策の「質」まで低下し,その地域格差が拡大しつつある現実を憂慮しているからである。
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