特別寄稿
痴呆予防についての誤解
須貝 佑一
1
1浴風会病院精神科
pp.1129-1135
発行日 1997年12月10日
Published Date 1997/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901701
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はじめに
ぼけ予防という言葉が流行している。背景には人口の高齢化に伴う痴呆症のお年寄りの増加がある。痴呆症患者の俳徊や迷子など,さまざまな異常行動に介護者は疲れ果て,社会的な対策も遅れがちである。「ああなりたくはない」という気持ちや「迷惑をかけたくない」という感覚,さらには未だに治療法が確立していないといった事情が重なって「予防」に期待がかけられているのである。
確かに痴呆症の中には,その発病の機序から予防が可能な疾患は少なからずある。脳梗塞の1つのタイプである多発梗塞性痴呆は脳血管障害の予防に力を注げばある程度まで発症を抑えられる。しかし,このところ巷で叫ばれているぼけ予防は主として老年痴呆,大部分がアルツハイマー型痴呆を想定しているように見受けられる。ぼけは早く見つければ予防も治療も可能だというスローガンで,一部地域や老人保健施設などで痴呆発見テストを駆使して予防に躍起となっている。多くは浜松方式と呼ばれるテストと訓練を組み合わせた脳刺激訓練教室である。その結果,有効率97%という数字をあげて学会報告するまでに至っている。マスコミも大々的に報じ,ぼけは予防できるという確信を一般に広めている。
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