連載 衛生制度の開拓者たち—明治はじめ京都における政策をめぐって・6
精神衛生のあけぼの
小野 尚香
1
1大阪大学医学部公衆衛生学教室
pp.240-243
発行日 1994年3月10日
Published Date 1994/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900895
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昭和62(1987)年に制定された精神保健法には,精神障害者の入院に関して,人権を重視した処遇改善と,彼らの社会復帰促進という方向が示されました。社会復帰を目的とした施設の設置についても,明文化されています。そして今,ノーマライゼーションを課題として,地域での精神保健政策が推進されています1)。
今から約120年前,明治8(1875)年7月,京都において,日本ではじめて,公立の精神障害者のための施設「癲狂院」が開かれました。「衛生事業」として認識され,保護治療を目的とした入院環境が整えられ,社会復帰につながる療法が試みられたのです。その施設を支えた人たち,たとえば行政官や医師たちが,精神衛生政策にどのような理想をもち,何を実践したのか,その足跡をたどってみたいと思います。
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