発行日 1975年5月15日
Published Date 1975/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542908984
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光電比色計を利用して血球計算を行うことを初めて思いついたのは,昭和23年であった,当時フィルターすら高価で入手できなかった時代である.いろいろと試行錯誤の末に,血球計算のための比色には,赤色光の近赤外線が有効であるという結果を得たのが昭和26年ごろである.そこで,ある工学部の教授のもとで分光光度計や光光電比色計を自分で組み立てた.大げさに言うと食事にも困るそのころであったから,光電比色計など容易に入手できなかったし,また工学部の習慣として,すべての機械は自分で組み立て自分で修理せねばならなかった.正確なフィルターの入手が困難なので,結局は各種の濃度食塩水中の赤血球の形態とその吸光率を追って行ったが,これがはからずもanti-sphering factorやsurfacephenomenの発見につながったのである.貧乏も皮肉なことに研究を助成する要素かも知れない.キューベットなども,そのころは安定性のある装置を望めなかったので,固定密封型とし,大漏斗と大注射器を使って資料を出し入れした.この方法と光源にバッテリーを使うことなどによって正確な光電比色計を製作しえた.もっとも,装置そのものは巨大化せざるを得ない.計測器にガルバノメーターを使うからである.
赤血球は,2.5%前後の食塩水中でsphericとなり光のdeflection (屈折)やreflection (反射)を起こす.
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