特集 暮らしをとりまく環境と保健活動
地域保健における保健婦と環境衛生
西 正美
1
1石川県保健環境センター
pp.533-538
発行日 1993年7月10日
Published Date 1993/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900718
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はじめに
長い保健婦活動の歴史を繙くまでもなく,保健婦活動は,絶えず疾病と対象者の生活環境との関連の中で,多くの療養指導をその基盤として行ってきた。わが国における保健婦活動の濫觴ともいうべき母子保健・乳幼児対策では,助産環境への配慮やその施設の提供,乳児の衣類や母乳不足への対応など育児環境の改善に努めてきた。急性伝染病対策では,家庭内の清潔確保のための水の使用法や,手洗いあるいは食品の取り扱いなどの指導を行ってきた。結核対策が最重点課題となって,屋内の日照,通風などのための改修や寝具類の取り扱いなどの指導にも努めてきた。これらはすべて対象者の疾病対策などのための環境改善である。
翻って,多くの感染症を克服し,微生物対応としての生活の場での消毒,清潔などの意識は向上し,多くの疾病の背景要因の1つの貧困も克服され,非感染症とくに加齢による健康破綻や疾病への対応が求められている。このような対象の保健活動が多くなるにつれ,感染症時代の環境へとは別の関心を持たねばならないようになってきた。感染症時代の環境要因は,病因と宿主とのバランスへの加重要因であった。それに引き替え,今日の課題では,環境要因は単なる附加あるいは加重要因ではなく,時には主役あるいは準主役となってきている。
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