特集 地域における疾病管理と保健婦活動—感染症を中心として
エイズカウンセリングマニュアルの紹介
根岸 昌功
1
1都立駒込病院感染症科
pp.714-719
発行日 1991年9月10日
Published Date 1991/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900305
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はじめに
エイズはHIV(Human Immunodeficiency Virus)と呼ばれているウイルスが原因の病気である。HIV感染症は,慢性進行性の感染症で,ヒトの免疫機能が崩壊して,いろいろな合併症を起こすようになる最終臨床像がエイズである。現在,HIV感染に対する根本的な治療法がない。わずかに,HIV感染の進行を遅らせる治療法が試みられ,いくつかの業績があがっているだけである。したがってこのHIV感染者は自分が近い将来健康を害し,命を落とす可能性の高いことを知っている。彼らの心理的ストレスは強く,場合によっては,第三者の援助を得て,このストレスに立ち向かう必要がある。ここの事情は他の致命的な疾患にかかっている患者と同じである。
一方,このHIV感染の感染経路は限られていて,感染者本人とその周囲の人に十分な知識があれば,この感染症の伝播を防ぐことができるのも,厳然たる事実である。したがって,社会的な観点からすると,感染者にはHIVに感染しているという事実を知らせ,他の人にうつさせないように自覚ある行動を取るよう働きかける必要がある。こうして,医療従事者は感染の告知をせざるを得ないことになる。
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