特集 「行政ウーマン」としての保健婦
保健所・市町村などで働く保健婦に期待されるもの—公務員として
山口 延子
1
1千葉県習志野保健所
pp.726-731
発行日 1989年9月10日
Published Date 1989/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207805
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I.はじめに
私が教育の現場から7年ぶりに某保健所に転勤して最初に感じたのは,保健婦のあわただしい動きであった。活発に活動しているのかと頼もしくも思ったのだが,管内人口10万弱の人の動きも少ない穏やかな農魚村地域の保健所としては,その存在が所内でも目立った。保健婦の実績をみると所内外の健康相談と集団検診などの保健事業で全業務の1/3強を占めており,そのうちの半分は管内市町の保健事業の支援であった。だから保健婦の予定表には事業がビッシリと書きこまれていて,わずかな空間に訪問が行われているといった状態である。ある日,地域へ出向いての乳児相談を実施しての報告書に「来所した乳児3人,従事した保健婦2人,とくに問題なし」という内容だった,何のための乳児相談なのかと聞いてみると,いろいろ理由を述べていたが,要するに地域の健康問題が把握できないので実施しているというのである。ここで始めて保健婦の保健事業にかかわる考え方が分かってきたと同時に,沢山の保健事業からは受持地域の保健情報として生かされずに1つ1つの保健事業を分断して実施していることが判明した。地域での保健問題は不在のまま保健事業だけが仕事の中心として計画され,そのなかに保健婦が配置されているといった感じがみえてきたのである。
このようなことはここだけの現象なのかと思ったらそうでもないことが研修会に参加して,その研究事例をみて実感できた。
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