連載 『ケア学』の新地平 広井良典のケアをめぐる交話・5
ケアと民間企業
武田 雅弘
1
,
広井 良典
2
1(株)ベネッセスタイルケア チャイルドケア事業部
2千葉大学法経学部
pp.480-483
発行日 2004年5月1日
Published Date 2004/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100451
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広井 今日はベネッセスタイルケア(以下,ベネッセ)の武田さんをお迎えしています.武田さんは,もともと厚生労働省で医療政策にかかわられていたのが,今は民間企業でケアの事業を担当されるというひじょうにユニークなご経歴です.「ケアと民間企業」というのは,多くの医療従事者にとっては違和感,場合によっては抵抗感のあるテーマかもしれませんが,武田さんはいったいどのような思いから,行政から民間企業にというご決断をされたのでしょうか.
武田 厚生労働省に勤めていたころ,2年間自治体で仕事をする経験をしました.そのとき,地方公共団体による直営サービスの財政状況を身近に目にし,その窮状から「将来自治体財政がより悪化した際には,ケアの質を保障できないし,供給も不十分になってしまう」と感じました.同時に,民間企業のほうがきちんと効率性と質を両立させたケアサービスを提供できるのではないか,そのためにはそれが投資として最低限成り立つようなシステムを作らなければならないという思いに駆られました.しかし一方で,医療や福祉に民間企業を導入すると営利中心主義になってしまい,福祉の理論にそぐわないのではないかという意見が根強くあります.これに反論できるような根拠がなければ政策を変えることはできません.そこで,民間企業でもこれだけのケアを提供できるという証拠をみずから作ってやろうと転職を決意したのです
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