書評
―羽室俊子 山崎文代訳―発達障害児の指導
亀野 良子
1
1練馬障害児者をもつ親の会
pp.794
発行日 1987年9月10日
Published Date 1987/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207382
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アメリカでは数十年続いた障害児施設隔離が反省され,地域で暮らす傾向になってからもう十数年になる。施設隔離の時代には,一般社会で暮らす人々は,学校でも病院でも公園でも障害児を知らないで済ませることができた。いま,みんなの視野のなかに障害児が入り始めた。障害児にとってはやっとつかんだ幸せである。十数年の間に,予防や治療によって障害を軽くする研究が進んだ。本書は,研究の結果知り得たこともわかり易く書かれている本である。一般社会はまだ障害児に慣れていないとはいえ,病院はその出生にかかわり,またその後不安を抱いた親がまずかけ込むところであるから,"知らない"では一日も済まされない場ではある。障害児について改めて学んだことのない方でも,この本を読み通すことで,子供への接し方のみならず親の不安をも受けとめていけるように具体的に書かれている。しかも細かいところ(親にとっては重大なことだが)にまで配慮があり,障害児のきょうだいの問題,親の価値観,暮らし方による援助,助言のちがいにも筆が及んでいる。乳幼児発達促進のための,食事,睡眠,しつけ,言語,遊び,その他,具体的な訓練活動の表が30ページ分もあるが,母親への助言は明日から生かせる内容である。この助言によって,母親は明日から何をするか,目標をもって子育てができるにちがいない。
しかし決してハウ・ツウものではない。
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