事例検討
アルコール中毒症患者の断酒への援助を通して援助を要するニードの明確化を考える
金山 せい子
1
1徳島県立看護専門学校保健婦助産婦科
pp.1021-1027
発行日 1981年12月10日
Published Date 1981/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206450
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I.はじめに
近年急激な社会の変化に伴い,母子や老人保健などと共に,地域精神衛生は今後の大きな課題となってきている。表1,図1に示すように精神障害者は増加の傾向にあり,しかも,昭和40年頃から受療率の最も高い年齢層が,それ以前より10歳ほど高くなり,壮老年層の受療率の増加が目立っている。この背景には,人口の老齢化,即ち周囲への適応能力の乏しくなった老人の増加や,複雑化した社会が及ぼす壮年層への精神的負担などがあると思う。そして,このような中で,ストレスや悩みを飲酒により回避しようとして酒におぼれ,心身の健康をそこね一生をだいなしにする酒の犠性者も多い。図2に示すように,全精神障害の中の5.9%がアルコール性精神疾患である。しかし,欧米ではそれが全体の15〜20%を占めている。それは,欧米にアルコール性中毒(以下,アル中)患者が多いのではなく,日本のアル中対策が遅れているためである。治療を要するアル中患者が多数放置されていることも,大きな問題である。
今回,E・ウィーデンバッグによる"臨床看護の本質"での文献学習を通し,患者のニードについて学んだ。看護婦の責務は,患者のもつ援助を要するニードを理解することにより,明確になる。援助を要するニードを理解する時,それを患者が体験していなければ,まず体験させる必要がある。
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