連載 活動の中から
じん肺検診の中で保夫さんのこと=1
吉田 幸永
1
1京都府日吉町
pp.700-701
発行日 1977年11月10日
Published Date 1977/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205917
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保夫さんは,51年11月に,じん肺管理4で労災認定になった66歳の患者さんである。頭がきれて,患者同盟の基準局交渉でも,メモした手帳を開き,ピシッとした発言をして相手方を逃さない。この保夫さんが,農繁期の間だけ入院をした。そして8月13日お盆の外泊をとって帰ってきた。
仕事をしていてふと顔をあげると,色の白くなった保夫さんがわたしの横に立っていた。「あ,保夫さん退院ですか……?」「いや,なかなか退院させてくれんけど,今日は盆の外泊をとって帰ってきました]「そうですか,病院はどんな具合です?」「そら,ひどいもんやなあー,第一暑うて暑うて,病室の温度を書いてますのや,8月4日38℃,5日37.6℃,そら保健婦さん,ベッドの柵が熱いのでっせ」「38℃……!」「そんな中で,なんぼ扇風機廻しても,ちょっとも涼しい感じしやへんのです,で,わたしら冷房の入っとる本館の方へ行きますのんや,そしたら結核病棟の看護婦に叱られますし,そら,どうにもこうにも……こんなことやったら病気治しに来とるのか悪うしに来とるのか,ま,早よ言うたら養老院の姉さんみたいなもんですな」「……」「この間も頭の後の方がおかしいので看護婦に血圧測ってほしい言うたら,血圧は主治医の許可がなかったら測れませんと,こうでっしゃろ」「何という看護婦でした」「それが名札つけとったけど,うらがえしとるのでわからへんのです。
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