特集1 しのびよる職業病のかげ
地域を担当するあなたの活動は……
職業病は医学的にどう扱われているか
細川 汀
1
1関西医科大学
pp.21-26
発行日 1974年1月10日
Published Date 1974/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205416
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現代の職業病と医学の立場
1)職業病をとりあげる意味
今日,産業のめまぐるしい発展の結果起きてきた,労働の多様化と機械化・化学化,都市化と産業公害・交通災害の拡大,労働者階層の変化などは,国民とくに労働者の健康を左右するもっとも大きな要因であることが,社会的に認識されるようになった。
とくに,1955年以降進められてきたわが国の産業"合理化"は,職場の作業内容・労働条件・作業環境を急速に変化させつつある。生産第一主義にもとづく設備の飛躍的拡大と安全衛生の軽視,石油合成化学の進歩に伴う有害・危険物質・工具の使用,一人当り作業量・作業種類・作業速度の増加,精神神経の緊張と拘束性(姿勢を含める)・責任性の強化,労働の分業化・単純化の反覆くりかえし,夜勤の増加,危険有害作業の下請・孫請化,婦人(ことに既婚)労働(者)の拡大,などを主要な内容としてきた。それによって,労働の肉体的・精神的負担の検討,有害物質の慢性毒性や発ガン性・遺伝への影響の事前点検,種々の有害要因の複合の結果の分析,職業病と産業公害との関係の追及,監視労働(交替制)とオートメーションの安全性など従来の労働安全衛生のテーマや方法論では処理できない課題があらわれてきた。
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