連載 復帰前の医療—本土・沖繩を結ぶ・3
明日の医療にむかって
浦野 元幸
1
1沖縄名護保健所
pp.46-47
発行日 1970年10月10日
Published Date 1970/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204774
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7月22日から4日間,派遣医師会というので久々に先島(宮古,八重山)へ旅をしました。那覇空港から1時間余り,360粁時速のYS11で空と海の美しさにまたたく間に八重山へつきます。八重山保健所も病院もやや古くなったなと感ずる程度,昔かわらぬ八重山の風光に心を奪われます。街は少々目立ったビルが新築されたほか,昔のままで,港は沖縄一の海の色といわれる紺碧が南の太陽に輝いています。西表もこのところ観光ブームで続々と人が入り,石垣市内も観光客だらけです。復帰前というのに本島のいたる処に俗悪な日本人好みの観光施設がつくられ,金さえ落せば式のエコノミカル・アニマルズの面目躍如たる中にせめて八重山位はと念じざるをえません。沖縄の美しさを何とか保存したいと切に思うのです。半ば日本人としての反省,半ば日本人としての不幸をかみしめながら……。
現在の派遣医は精神4,ライ1,結核2,検査1でひと頃の大半が結核であった時代は過ぎて,精神の方に転じております。若い精神科の派遣医が来島し,3カ月毎のローテーションでフィールドワークに,あるいは院内診療に取組んでおります。派遣医師の問題については別の機会にまとめてお話しすることにして,この会議の席上,それら医師達の発言の中にはからずも病院中心の医療だけが大きくしめられているのにぶつかって,私自身が深い反省をせまられたのです。
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