グラフ
汚れた富士の麓—工場誘地と公害との板ばさみに悩む住民
pp.2-8
発行日 1969年11月10日
Published Date 1969/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204526
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"田子の浦にうち出てみれば白妙の……"風光明眉な富士市は,このところ汚れに汚れて,新しい名物都市として話題を呼んでいる。温暖な気候,みかんの花咲き食物の豊富な観光地は,煤煙と,排尿と,政争の巷となりつつある。被害をうけるのはきまって住民,しかし,じわじわと体をむしばむ大気汚染に,ある意味で慣らされてしまっていた住民も,あらためて,保健所の健診に,自らの肺が,気管支が汚されているのを知った。とりわけ幼ない子どもたちや老人にとって,工場は何のかかわりもない。農民は,作物を荒らされ,漁民は漁場をあらされ,水俣,四日市,そして阿賀野川と,数かずの他地域の惨事が思い起こされる。住民は怒りにふるえたちあがった。
しかし,製糸紙場の城下町である富士市のとりくみは,さまざまな派閥や,利害に思うようにすすまず,東電の火力発電所設置も決定されてしまった。問題の根は深い。
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