保健婦さんへ 期待と提言
人の和にしかず
村田 嘉彦
1,2
1都立駒込病院
2都立公衆衛生看護学院
pp.9
発行日 1969年3月10日
Published Date 1969/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204386
- 有料閲覧
- 文献概要
私はこれまで,自分のことはたいへんやさしく理解のある父親であると思っていた。もちろん,今もそう思っている。ところが,こと病気に関しては,私も結構うるさい父親であるらしい。特に家族のなかに病人の出た時には,大変やかましくなるとの専らの評判である。家人に言わせると,家族の誰かがかぜをひいたり,下痢をしたような場合には,「それ手をよく洗え」とか,「食器を消毒しろ」とか,「別の部屋にねせろ」とか言うので非常にうるさいらしい。
私は病院で患者を診察したあと,病名や治療法について話すだけでなく,その病気を人にうつさないようにするにはどうしたらよいか,またその病気にかからないためにはどのような注意が必要か等について,細かく指導することを心掛けているが,それが習い性となって家庭内でも出てくるのであろう。私は大学卒業後すぐ内科の医局に入り,稲田竜吉先生とか坂口康蔵先生とかのような厳しい先生の教えを受け,その後長い間専ら病気の診断や治療に憂き身をやつしてきた。もちろん公衆衛生的な問題の大事なことは,以前にも観念的にはわかっていたつもりであったが,個人の抵抗力を高めたり,環境衛生を改善して病気を予防することのたいせつなことを,切実に感ずるようになったのは比較的近年になってからのような気がする。それと同時に,公衆衛生の第一線に立って働く保健婦の役目の重要なことも最近になって本当に理解できてきたように思う。
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.