保健婦さんへ 期待と提言
新しい保健婦活動を
西尾 雅七
1
1京都大学医学部公衆衛生学
pp.9
発行日 1968年9月10日
Published Date 1968/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204256
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老人問題と保健婦
国民死因順位の上位を脳卒中,癌,心臓病等成人病と俗称されている疾病群によって占められてからすでに久しい。またこの状態は今後も持続すると考えるのが至当であろう。それだけに公衆衛生活動の中での成人病対策の占める位置は高まり,その対策の進展に伴って老齢期に達するものの数は増え,その人達の社会的活動の可能な期間が延長されることも間違いない。しかしいかに成人病対策が進展しても,歳を重ねることに伴う加令現象は防ぎ止めうるものではないのだから結果としては誰かに大変な世話になる老人を増やすことになる。もちろん,人間の延命を画り,それを社会的な努力によって実現することが公衆衛生活動の目標であるから,老人が増えること自体が一つの成果ではある。
敗戦前に教育をうけたものは小学校以来教育勅語を頭の中にたたきこまれてきたので,親の命に従い,親を大切にし,親を最後まで世話するのを当然のこととして,つねに家にしばられ,世間の目を気にし,年老いた親の面倒を見てきたものである。その家庭が,また年老いた親がいかに悩み,いかに経済的に苦しもうとも,それに耐え忍んできた。
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