基礎講座 第3会場
老人問題と保健婦活動
西尾 雅七
1
1京大
pp.960-970
発行日 1979年12月10日
Published Date 1979/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206190
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老人問題を考えるうえで
本日は老人問題と保健婦ということですが,私自身もう定年後6年目になっております。したがって,現在言われております老人の範疇にもう入っておるわけでございます。きょうは日本の老人問題,それから老人問題に保健婦さんはどう対応していかなきゃならないかといったようなことについて,私の考えを述べていきたいと思っております。
お読みになった方が多いと思うんですが,ボーボワールが書いた"老い"という本,非常にむずかしいことが書いてあって,哲学的なこともあるんですけれども,あれを読みまして私自身のことを振り返ってみますと,人間だれもがそうなのかもしれませんけれども,「あなたは年がいっている」と言われたときには,反発を感ずるものです。ところが,自分が物忘れをした,約束をしたのを守らなかったときに,どうも年なんでと言って年のせいにして逃げていきます。結局老いというものを自分自身で見詰めることはだれもが避けておるようです。言い逃れとして老いは使いますけれども,本当に自分が老いておるということを自覚することは,これは避けようとしているように思われる。そういうのが老人なんです。そしてて,これはまた老いというのは,老人問題と言ってもいいと思うんですが,結局社会的につくられてくるものだということを,皆さん十分理解していただかなければならないと思います。
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