特集 生活環境別にみた母子保健
農村における母子保健の実情
太田 トクエ
1
,
中野 寿美子
1
1岩手県下閉伊郡山田町母子健康センター
pp.10-13
発行日 1965年7月1日
Published Date 1965/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202997
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一口に岩手県というと,東北のチベットであり,乳児死亡日本一のところと思われることと思うけれども,私どもの町は岩手県沿岸の中央に位いしたむしろ漁業が産業の主要をなす町で,昭和30年3月1町4か村が合併し,人口25,508人,世帯数5,138戸,交通機関および医療機関にも比較的恵まれている.昭和36年2月母子健康センターが開設され,ここを中心に母子衛生活動を実施することになった.
しかしここに見る豊間根,荒川,関口,関谷地区と織笠の一部は,人口としては約30%を占めるに過ぎぬこれら地域も,面積において全町の約60%を占める農村地帯でもある.農村の生活これはいまさら申し上げるまでもなく,ツクシが頭を覗かせ始めれば赤ちゃんも妊婦もあったものでなくなる.たとえそれが産み月にある妊婦であったとしても,貴重な労働力の1人として数えられてしまう.そして母親が野良仕事に出てしまえば,赤ん坊は畠仕事も早無理となった年寄りの手にゆだねられるという生活が送られる.いまだに絶えぬ無介助分娩や妊婦の食生活に対する迷信,乳児の発育不良等とくに農村地帯にその問題も多く,以下は私どもの歩んで来た保健活動をかえり見たいと思う.
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