特集 現代育児論
乳児保育の現状と問題点
丸尾 ひさ
1
1あゆみ保育園
pp.34-38
発行日 1968年2月10日
Published Date 1968/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204115
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
いまとむかし
そもそも,私が,「保育」にとりくんだのは,昭和28年,今から,10数年前のことでした。まだその頃は,子どもをもってつとめをつづける婦人というのは,今のようには多くなく,「母親となっても,職場をつづけていこう,そうでなくては,婦人の地位の確保も向上も守れない」という,いわば,婦人参政権を確保し,それにつづく,婦人の働く権利を守ろうという,自覚の方がよりつよかったようにおもうのです。児童福祉法が定められて,ようやく,それによってうごき出した保育に欠ける子どもを受託する保育所は,そのような,0歳児の保育要求をみたすどころか,もっと上の年齢からの保育要求に応えることがせいぜいでした。
だから,その"働く母親"のはしりであった人たちは,そういう人たちで,何とかきりぬけていく必要にせまられました。そこで,「夫婦ともつとめに出れば,その部屋が昼間はあく。そこを保育室につかえばいい。1人の子を,1人の人にみてもらうよりは,何人かが一緒になって,共同で保母をたのもう」ということで,共同保育という形態が生れました。その頃,東京大学の中で,職場に保育所をと要求していたお母さんたちは,東大内につくることは,まだムリで,近くの,共働きの方の部屋をかりて,この共同保育をはじめました。これが,共同保育の元祖といわれていますが,そこに,つとめ始めたのが,私の「仕事始め」だったといえます。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.