特集 現代育児論
育児書の読み方
下出 智子
pp.23-25
発行日 1968年2月10日
Published Date 1968/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204112
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はじめて,自分の子どもが生まれるときに母親は嬉しさと,おそろしさとの両極端の気持を同時にもち合わせます。これは両親が,家庭の人であろうとも,職業をもっている人であろうとも,変りありません。さらに言わせていただくならつねに子どもを取り扱う職業,すなわち,保育園,幼稚園の保母さん,小学校の先生,看護婦,保健婦さん,小児科の医者であろうと,その気持には相違はないはずだと思います。
生まれた子どもを側において,1日の生活を送っている母親にしてみれば,くしゃみ,咳,吐乳等々,第三者からみればとるに足らないことであっても,その1つ1つが気がかりになることは当然のことでしょう。他人の子どものことは冷静に判断しているはずの,看護婦,保健婦さんも,お医者さんも,46時中みている自分の子どもには,冷静さを失うことは,よく経験していることです。ましてそういう知織のないお母さんたちが,たとえ,妊娠中にいくつかの育児書を読んで知識を得ていたとしても,生まれてきた子どもを前にして,その知識を縦横に使えるものではありません。赤ちゃんのわずかの変化に驚いて泣きだしそうな顔で相談にとびこんでこられることもあります。このような不安定なおかあさんを少しでも助ける方法は,近所の経験のある人,肉親のお年寄等,経験者に判断してもらう,医師に相談する等があります。しかし,前者はよい場合もありますが,反面誤っていることも多々あります。
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