特別寄稿
東南アジア(タイ国を中心として)の生活と寄生虫病—身近かな熱帯病への理解のために
吉村 裕之
1
1千葉大学
pp.65-69
発行日 1967年12月10日
Published Date 1967/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204085
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はじめに
近年航空機の利用が一般市民にも普及し,東南アジア地域への観光,商用のために出かける日本人の数はおびただしく年々増加の傾向にある。医学,保健の面においてもこれらの地域からわが国への留学生は年々増し,また医療協力という形でこちらからこれらの地方に出かける医学者または医療関係者もふえつつある。このような観点からわが国においても,熱帯医学に対する関心がようやくにして高まり,専門学者の間では熱帯医学はもとより広く熱帯科学の専門研究機関や,専門的な教育機関の設立が急務であると真剣にとりあげられていることは当然といわねばならない。国際間の交通の事実上の短縮はただちにいろいろの面においてわが国に直接影響するところがすくなくない。熱帯地方の流行病または伝染病がただちに侵入する危険なしとしない現状である。筆者は,熱帯医学の一主要部門である寄生虫病の研究を毎日の仕事とする者のひとりであり,つねに関心は亜熱帯または熱帯地方の疾患にもむけざるをえないが同時にこれらの病患の理解とわが国に対する意義を考えないわけにはいかない。
本年8月6目,灼熱の地バンコックの医科大学の熱帯医学部において,東南アジア地域のこれらに関する会議が開かれたので筆者も,その参加者の1人として加わり,その理解をさらに深め,またこの目でタイ国や,シンガポールを主とした地方の民衆の生活の実態を見,またたしかめる機会がえられた。
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