増刊号 感染症検査実践マニュアル
Ⅵ.感染症とその検査法
22.輸入熱帯病としての寄生虫症
大友 弘士
1
1東京慈恵会医科大学熱帯医学教室
pp.201-205
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902776
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はじめに
わが国における寄生虫症の流行動向をみると,かつて国内全土に蔓延していた腸管寄生虫症,あるいは特定地域の風土病であった日本住血吸虫症や糸状虫症などは,戦後の目覚ましい経済成長に伴う生活水準の向上,環境整備,農業形態の近代化,食生活の改善,広域駆虫薬の開発,寄生虫対策の浸透と衛生思想の普及,医療の進歩などにより,そのほとんどが絶滅に近い状態にまでコントロールされ,世界に類のないほど清潔な国内環境を保つに至っている.
ところが,最近の生活様式と食生活の変化,社会情勢の変遷,医療の進歩などに伴って寄生虫の感染要因が多様化し,従来の土着寄生虫症に代わる新たな人畜共通感染症,日和見感染症,性感染症に属する寄生虫症のほか,国際化時代を迎えて輸入熱帯病に属する寄生虫症が臨床の場で重要な疾患として注目されるようになっている.そこで,本稿ではわが国には存在しない多くの疾患が含まれるため,その医療対応に少なからぬ問題が提起されている輸入熱帯病としての寄生虫症の危険性について解説することにする.
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