特集 耳鼻咽喉科感染症の完全マスター
Ⅱ.病原体をマスターする
1.細菌・原虫感染症
7)嫌気性菌
星田 茂
1
,
吉崎 智一
1
1金沢大学医学部耳鼻咽喉科
pp.101-108
発行日 2011年4月30日
Published Date 2011/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101826
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Ⅰ 一般的特徴
無酸素条件下で発育できる菌を嫌気性菌と総称するが,単純に好気性菌vs嫌気性菌という単純なものではなく,酸素下では発育できない偏性嫌気性菌,酸素濃度が十分に低ければ増殖できる微好気性菌,酸素があってもなくても増殖できる通性嫌気性菌などに分けられる。単に嫌気性菌という場合は,一般には偏性嫌気性菌を指すことが多いが,通性とも偏性とも分類しがたい菌種も少なくなく,明確な区分とはいいがたい。嫌気性菌はヒトの常在菌叢を構成する主要な細菌群であり,特に口腔,上気道,腸管,腟などの粘膜面の常在菌叢の99%以上を占めるといわれる。
宿主の何らかの要因によりこれらの常在嫌気性菌の感染を起こすものを内因性感染,外傷などに引き続いて環境から非常在性嫌気性菌の菌体外毒素による障害を起こすものを外因性感染と分類する。嫌気性菌には多数の菌種が存在するが,内因性の化膿性感染症からの三大分離菌である,Bacteroides属,Prevotella属,Streptococcus属と,外因性感染症の起炎菌であるClostridium属が特に重要である。本稿ではこれらの菌種および,近年注目されてきているFusobacterium属を中心に概説する。Streptococcus属については,該当の章を参照していただきたい。
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