特集 救急処置
救急処置の意義
藤田 五郎
1
1自衛隊中央病院外科
pp.10-13
発行日 1964年8月10日
Published Date 1964/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203172
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はしがき
救急処置とか応急治療とかとよばれるものは,何か一時の間に合わせ的な医療や処置であると考えられがちである.しかしながら,よく考えてみると,英語ででも"First Aid"といわれるように,文字どおり最初の処置であって,患者にとって初めの処置が適切でなかったとすれば,そこには"Second Aid"もなければ病院における定型的医療も効果を奏しないことになる.保健婦の方がたが活躍されておられる分野においても,いろいろな災害外傷が突発するでしょうし,溺水,中毒などのほか,咽頭の異物のために窒息死する不幸な例など,日常必ずしもまれな事故とはいえないようである.防災ということばが最近よく使われるようになってきたが,このような小さな事故にまで注意を払って,予防してゆくことができるならば理想的であろう.家庭の一人一人にいたるまで"事故を防ぐための知識"が普及されていれば,年々増える不慮の事故を少なくしてゆくことができると思う.幼少児からの教育,家庭への安全思想の浸透を図るなどの努力が,一日も早く実ってほしいものである.不幸にして一旦起こった事故を,現場で適切な処置をすることは,前にもお話したとおりきわめてたいせつであるけれども,この救急処置がやはり正しく理解され,広く浸透しているかどうかは,その国の文明のバロメーターではなかろうか.
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