健康と社会・6
保健社会学のための調査法
雀部 猛利
1
1神戸女学院大学社会学教室
pp.69-72
発行日 1963年9月10日
Published Date 1963/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202932
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保健社会学ということばを文字どおり解釈すれば,保健衛生に関する社会学的研究ということになるのだろうが,それでは保健衛生とか,社会学というものをどのように理解すればよいだろうか.もちろん詳細に吟味すれば学にはいろいろな学派があるので,その論議も分れるだろうが,ここでは常識的に住民の健康生活が脅かされ,社会的な生活障害をもたらしている現実を,生活の場である家族や地域社会との関連において,あるいは階層や社会集団との関係において,さらにはまた住民の価値観や生活様式という文化形態との関係において理解してゆくのが保健社会学である,というぐらいの程度に一応規定しておこう.
W. H. O.(国際保健機構)憲章の前文に示されているように,「健康というものは肉体的にも精神的にも,また社会的にも完全に良好な状態をいうのであって,常に病気でないとか虚弱でないということではない」から,全体として調和のとれた人間の状態をいうのである.従って健全な生活を営み得ない人間の状態を社会学的な視点から,生活意識の問題として,家族生活の問題として,地域社会の問題として,社会階層の問題として理解してゆくところに保健社会学の課題が存在するといえるだろう.
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