特集 事業所保健婦の働き方をめぐつて
産業保健指導の体制をどう整えるか—チームの一員としての保健婦の役割を中心に
小沢 勝美
1
1石川島播磨重工業安全衛生課
pp.33-36
発行日 1962年9月10日
Published Date 1962/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202648
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1.はじめに—産業における衛生管理
わが国の衛生管理は結核管理にはじまり,今日まで発展してきたので,諸外国におけるその発祥と異なり,内容もおのずから異なつているのである.諸外国における衛生管理は衛生工学を基盤に,有害職場環境の改善・職業病予防を主業務とし,今日では適性配置ということが重要な業務となつている.さらに衛生管理を作業管理・技術管理として解決しつつあり,衛生工学と人間工学,老化現象と労働の量・質・種類の関係等の研究が進められているのである.これは近代産業において労働に従事する者がその職業のために健康を損ねたり,生命を失つてはならないからで,その底に流れるものは個人の生命と自由の尊重とである.このために各人が法規・社会道徳やエチケツトを厳守し,自分のことは自分で解決し,開拓せねばならぬという心構えができているのである.
このような諸外国の衛生管理に対し,わが国では福利厚生的な形で出発して,今日に到つているので独自の姿を呈しているのである.このことがある観点からは一つの問題点となり,現在の衛生管理が結核中心・疾病中心からの脱却という転換期において障害となり,過去の概念にとらわれた企業からみれば二次的業務と思われ,このため人手不足,あるいは適材の人が得られないなどの組織上の溢路をも形成している.
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