めずらしい病気
脈無し病について
三島 好雄
1
1東京大学医学部清水外科教室
pp.69-71
発行日 1962年8月10日
Published Date 1962/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202639
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脈なし病は1908年高安が"奇異なる網膜中心血管の変化の1例"として報告されたのが最初であり,それ以来わが国でいくつかの報告例がみられたが,1948年にいたり清水・佐野によつて大動脈弓,肺動脈,ならびに大動脈弓から分枝する腕頭動脈,総頸動脈,鎖骨下動脈などの慢性動脈炎と定義され,症候学ならびに病理学的に精細に研究し,「脈無し病」と命名された疾患である.以後本邦でも症例が急に増加し,病理学的研究もさらに詳しく行なわれるようになつた.
この慢性動脈炎の本態はよく分つていないが,炎症性変化は全層に及び,とくに中膜・外膜につよく,那須らは栄養血管を軸として,主に中外膜に病変をみることから動脈中膜炎と呼んで差支えないと述べている.しかしながら同時に内膜に著明な肥厚を起し,このために内腔に血栓形成を来し,閉塞が起つて,頭部や上肢の血行障害を惹起する原因となつている.
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