書評
柴田 明子・小林 富美栄・松浦 健児 編集—職業的適応
湯槇 ます
1
1東大医学部
pp.44
発行日 1962年6月10日
Published Date 1962/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202592
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今日いわれている職業的適応は,看護の運命とともに動いてきた.看護が単なる手先きの技術(わざ)といわれている頃から,ある時は看護婦の態度や,礼儀作法の「お手本」の形をとつたり,また職業道徳としてその責任感の昂揚に一役買つたり,倫理として理想の声明と行為の基準をうち立て誓詞や綱領として称えたこともあつた.著者もその序文にそれは固定された概念ではなく時代や場所によつて変化すべきものといわれている通り,今日では職業適応即ち,「看護とはいかなる立場をとり何をなすべきか」を学びとることと考えられるようになつた.しかしこの手がかりとなるものは容易に得られなかつた.柴田さんは長年看護教育に携られ職業的適応を求あて,まず閉されていた看護の窓をあけ,新しい空気を流し込み,さらに外に出て多くの職業婦人の群集にまじり,そこからもう一度看護を改めて見直そうとされた.医療と看護の役割では社会的,専門職業的,個人的な看講婦の姿が如実に描かれて将来への多くの暗示を含んでいる.彼女の看護教育に敬する熱情をしるものにとつてはほほえましく,誇らしく思うことである.看護の動向はまさに,エスサイクロペデァ的尨大な資料である.保健婦・助産婦・看護婦の各分野に亘る現状業務教育活動を明細に説明し,安心してページを開けば答がまつている.いつも広い視野をもちコツコツと勉強し,数字をならべ計算し青写真をかいてゆく小林さんの努力の蓄積であろう.
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