特集 保健婦教育制度—その問題点
その2現場における問題点
保健婦教育の将来について—教育制度委員案のふくむもの
小栗 史郎
1
1名古屋市衛生局
pp.36-41
発行日 1962年4月10日
Published Date 1962/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202551
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保健所と保健婦の現場
1.浮き上つてきた保健所
公衆衛生関係従事者の教育,訓練,身分制度の問題が大きくなつてきたのは,現場で働いている公衆衛生従事者の矛盾が,捨てておけないほどひどくなつてきたからである.野辺地委員長は神戸の懇話会で,「戦後日本の公衆衛生制度は飛躍的に拡張されたが……国としてはその法制,法文などの整備には力を入れてきたが,従事者整備の問題は,今までそのいとまがなかつた」と,現状の矛盾の成立を総括しておられる.これが従事者の量と質との問題に展開し,一つの流れになつてきたわけである.
矛盾を打開するもう一つの流れは,「業務分析」として保健所内部の仕事の分析に向けられた.この運動は,一面では国の緊縮財政,貧困化する衛生行政の実態に対して,予算獲得のための資料としても,また衛生行政当事者ばかりではなく,国民へのPRとしての資料としても役立つた.またこの運動の実績を基礎にして,橋本正己氏の保健所運営の基本的な考え方,すなわち①地域診断,②業務測定,③この両者のギャップを埋める方式として,ⓐ仕事の量と質の重点化,ⓑ地域組織活動(Community Organization)の方法論が32年ごろから定式化されはじめた.今までの無秩序な衛生行政に,社会技術的な考え方と実践方針とを組み入れ,秩序づけが行なわれたわけである.
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