コンタクトレンズ(23)
男の仕事というもの
長谷川 泉
pp.37
発行日 1961年3月10日
Published Date 1961/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202288
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大修館の社長鈴木一平氏が「大漢和辞典」全13巻完成の後記として書いている一文は,私が最近において最も感銘を受けたものであつた.「大漢和辞典」は諸橋轍次博士の箸になり,計画以来30年を要して見事に完成したものである.今の世は漢字制限の世の中であるから,漢和辞典などという存在はしだいに縁遠いものになりつつあることは否定できない.しかしながら,そのことをもつて「大漢和辞典」全13巻の超ど級の出版の功を没却することにはならない.
鈴木氏が漢和辞典の出版を志したのは,出版人として独立創業の機を得るにいたつての抱負であつた.じらい戦時下の乏しい物資の中にあつても,苦心経営に当たり,戦災に会つてすべてを灰燼に帰してもくじけず,ひたすらに生涯の目的の完遂につとめた.戦後ようやく出版再開の機運に遭遇し,最新の技術をとり入れ,構想を新にして,ついに目的を達成するにいたつたのである.
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