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家庭看護の必要性
永野 貞
1
1国立公衆衛生院看護学部
pp.7-11
発行日 1960年10月10日
Published Date 1960/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202181
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はじめに
家庭看護の必要性を説きその旗印をあげてほしいとの要望である.しかし私は,今日,保健婦に向つて家庭看護の重要性や必要性を説く気にはなれない.家庭看護を行なつたり,家族にそれを教えたりすることは保健婦に課せられたいくつかの基本的業務の1つであり,地区を受持つて総合的に保健指導をする保健所,市町村国保の保健婦は今までも,それぞれの立場で可能な限り家庭看護を行なつたり家族指導をしてきた.しかし今日の問題は,そのような意味に於ける家庭看護ではないのではないか.即ち現代社会の疾病の特徴ともいえるが,死亡率,罹病率に於て優位の地位を占めている高血圧,心臓病,癌,その他の慢性疾患の如き,長期な,従つて自宅療養者も多いと考えられる病人のための家庭看護を更に歩みを一歩すすめて積極的に考えなければならないという課題であると思う,従つて,それは大きな課題であり我が国の保健婦活動の将来の重要な問題である.それは現在の保健所や市町村の保健事業の組織と機構に必ずしも規定されない立場で考えてみる必要があると思う.
この課題が,もし現在の保健所や国保の保健婦の家庭看護に対する知識や技術の不足を問題とし家庭看護の機会や重要性に対する認識不足をのみ問題として今後の問題にふれないとするならば,それはあまりにも我が国の保健婦が当面することの核心をつかない消極的論争に終つてしまう危険性がある.
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