書評
藤島 茂 著—トイレツト部長
pp.48
発行日 1960年6月10日
Published Date 1960/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202113
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「臭くも長い物語」「犬の運賃」「鼻毛の鋏」の三つのグループからなる随筆集であるが,最初の「臭くも長い物語」が一番面白い.著者は国有鉄道に勤める建築技術屋だが,長年国鉄の便所係をやつているので,通称「トイレツト部長」と呼ばれている.便所のことだけを中心に生活し,便所を通してみた世相というものは,いままでに書かれたことがないだけに興味のある問題である.
国鉄の便所を掃除したら金庫とコウモリ傘とが出て来たとか,駅の便所から背広が出た話とか,意外な話が沢山紹介されている.出歯亀という話では,駅のコンクリート造りの女便所をのぞくために,ドリルを使つて壁に穴を明けた男の話なども人間の執念の深さを示している.
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