書評
—尾身 茂 著—WHOをゆく 感染症との闘いを超えて
井戸田 一朗
1
1しらかば診療所
pp.2000-2001
発行日 2020年10月10日
Published Date 2020/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402227275
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私は,現在は一介の開業医ですが,2003〜2005年にWHO南太平洋事務所にて,結核対策専門官として南太平洋15カ国における結核感染症対策に携わる機会がありました.赴任前の2002年10月,当時WHO西太平洋地域事務局(WPRO)の事務局長だった尾身茂先生の面接を受けました.ちなみに私をWHOに誘ったのは,現WPROの葛西健先生です.葛西先生は私を事務局長室に連れて行き,尾身先生を紹介してくださいました.当時の私は30歳台前半で,WHO内の右も左もわからず,国際保健業界で既にレジェンドの尾身先生を前に,カチコチに緊張しました.尾身先生は,テレビの印象とは異なり,どちらかというと親分肌の方でした.緊張でろくに返事もできない私を,葛西先生が助けてくれたのを覚えています.
COVID-19流行による混乱のさなかにある2020年5月11日,参議院予算委員会にて国会議員の質問に対する尾身茂先生の答弁があり,優しい口調で語り掛けるように丁寧にお答えになる姿を動画で見ました.国内外の会議において雄弁で大胆にご発言をされる尾身先生を私は知っているので,「ちょっと意外……」と思いつつ見ていたところ,答弁を妨げるようなやじや,期待した内容の答弁が得られなかったことに対するいら立ちの声が上がり驚きました.
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