コンタクトレンズ(3)
堀辰雄の思い出
長谷川 泉
pp.47
発行日 1959年7月10日
Published Date 1959/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201908
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堀多恵子さんから「妻への手紙」を贈られて,堀辰雄への思い出がせつなくよみがえつてきた.この本は,最近の騒然たる世相を忘れさせるおちついた高雅な本である.人間と人間の魂の交感のあたたかさや叡智のきらめきが,どんなに人生を豊にするものであるかをしみじみと語つて本である.
夫の妻にあてた書簡束,そして夫を回想する妻の手記,この本はそのような構成でなつているのだが,それが渾然たる一体となつてその間にしきりがない.病身の夫に長くかしずいて,妻であり看護婦であり,が孤高の文学のことなき享受者,理解者としての役割をはたしてきた夫人が編んではじめて,このような清らな珠玉が生み出されたと思う.この本は,堀辰雄を愛する人たちに喜びむかえられているようである.うれしいことである.
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