社会の窓
少年犯罪の激増
阿部 幸男
pp.55-56
発行日 1958年11月10日
Published Date 1958/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201763
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小松川女高生殺しの犯人が18才の同校の夜間部の生徒だつた事件は世間に大きなシヨツクを与えた.新聞社に電話したり,完全犯罪を誇称したり,以前に迷宮入りを伝えられていた賄婦殺しも同少年の犯行だつたことが判明するなど,人々の耳目を驚かせる出来事が相ついだ.同時に,最近の少年犯罪の激増が改めて問題となり,少年法の年令引下げまで問題に上つたりした.
大きな戦争が起ると,その後数年間は犯罪数が増えるのが,歴史の常で,戦前に比べて犯罪が増加している点では,少年も大人も同じことである.しかし,世の中が安定すると共に,犯罪の面も落着いて逐次低下を示してくるのも従来の傾向だつたが,戦後の日本の少年犯罪は少しも衰える様子を見せず,昨年あたりは戦後最高の激増ぶりを示している.しかも,少年法適用の年令を引上げるように,世界各国の大勢が進んでいるときに,逆に引下げが論じられるようになつたのは,18才から20才までの少年に兇悪犯が非常に多いからである.兇悪犯とは殺人,強盗,強姦,放火の4つを指すが,放火は少しも増えていないので,前の3者が大変な勢いで増えているわけだ.戦前の昭和16年に比べると,少年の兇悪犯は昭和25年に5倍のピークを示したが,昨年の如きは実に8倍を越えている有様である.
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