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「人形の家」と女性解放
所沢 アヤコ
1
1編集部
pp.106-107
発行日 1958年5月10日
Published Date 1958/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201655
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今年は,1909年に小山内薫と市川左団次が主宰した自由劇場の公演より50年目に当つている.この「新劇50年」を記念して,3月30日から4月20日に渡つて,ヘンリツク・イプセンの「人形の家」が劇団民芸によつて上演された.
1909年に小山内薫と市川左団次によつて取り上げられたレパートリーも,イプセンの「ジヨン・カブリエル・ボルク・マン」であつたし,1911年(明治44年)に文芸協会によつて初演された「人形の家」の松井須麿子のノラは多くの新しい女を生んだと云われており,日本の新劇とイプセンの関係はまことに密接なつながりを持つている.しかしこれは当然の事で,いわゆる問題劇をもつて近代演劇を確立したイプセンが,近代思想をかかげて出発した日本の新劇のレパートリーにしばしば取り上げられたのは必然である.イプセンは宗教の問題,新旧思想の問題,社会階級に関する問題,男女の社会的関係の問題等をそのテーマとして扱つているが,「人形の家」は男女の人間関係がその主題であり,当時の男女の在り方に大きな疑問を投げかけた社会劇である.
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