2頁の知識
ストロンチユーム90
江藤 秀雄
1
1東大放射線科
pp.48-49
発行日 1957年7月10日
Published Date 1957/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201450
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ストロンチウム-90とは
ストロンチウムとは原子番号38の元素につけられた名前である。ストロンチウムは銀白色の鉛のようなやわらかさを持つた金属であるが,化学的には周期表からもわかるようにカルシウムとよく似た性質を持つており,天然に見出されるものは重さの異なる4種の同位元素詳しく云えば質量数が84,86,87,88の4種の同位元素がある一定の割合で混つたもので,勿論安定な元素である。ここに問題としているストロンチウム-90とは質量数が90のストロンチウムのことで,天然には存在しない所謂人工放射性元素であつて,放射能を持つという点を除いては,化学的性質など安定なストロンチウムと全く同じである。(原子番号,質量数,その他放射能に関する事柄については本誌13巻4号"放射能についての知識"参照)
原子爆弾や或はこれを起爆剤として用いた水素爆弾の爆発の原因となるウラニウムやプルトニウムの分裂によつて多数の元素が生ずるが,これらは核分裂生成物(フイシヨン・プロダクト)と呼ばれ,いずれも放射能をもつた不安定な元素許りで,ビキニ事件以来"死の灰"などといわれるまことにぶつそうなものである。そのなかにストロンチウム-90も含まれているわけである。ストロンチウム-90は放射線としてはベータ線を放出して,イツトリウム-90という元素に変り,これがまた前者よりもはるかに透過力の大きいベータ線を放出する.
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