講座
抗生物質の副作用
眞下 啓明
1
1順天堂大学
pp.19-24
発行日 1956年8月10日
Published Date 1956/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201242
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1940年FloreyおよびChainにはじまるペニシリンの実用化以来,相次いで出現したいわゆる抗生物質剤は諸種の感染症に対してすばらしい効果を発揮して,次々と感染症を征服して行つた.すなわち抗生物質療法時代として,感染症に対する原因療法の主流をなすに至つたわけである.しかしこの輝かしい人智の勝利とたたえられた抗生物質剤といえども半面に欠点のないわけではなく,すべての薬剤にみられる副作用のある点においてはやはり同一の性格をもつものである.各抗生物質剤にみられる副作用はこれら各薬剤の使用が盛んになるにつれて漸次その全貌が明かになつて来たのであつて,後述するごとくたとえば今日もつとも話題となつている,ペニシリンによるアレルギーないしアナフイラキシー症状の出現はペニシリンの出現した初期には少くとも問題にされておらず,ペニシリンこそは中毒性の全くない,いくらでもつかえると考えられていた薬剤であつたわけであり,また初期に懸念されたクロランフエニコールによる造血障碍は今日ほとんど重視されなくなつている如きものもある.
Copyright © 1956, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.