今月の言葉
衛生教育の黒星
pp.5
発行日 1956年6月10日
Published Date 1956/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201205
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私は,2〜3日前の或新聞にある「声の欄」をよんで,びつくりした。其処には,「迷信製造業者をなくそう」と題して,一人の主婦が,夫のなき後に,夫の母親が或る最近の新興宗教にこり出し,ひどくこれを信じて,迷わくをこうむつているという意味の投書がのつていた.そして其の主婦は,その新興宗教をさして迷信製造業者となづけ,何とか取りしまれないかと,訴えていた.
其の記事によれば,例えば毎朝仏壇にあげる水に,泡が生じていたら悪いことが起るから教祖に献金を殖やせとか,或る一定の方角の家に泊れば,本人もその家の者も幸せになるからといつて相手の迷わくも省みず,それも3ヵ月でも泊り歩くとかいう類のものが多いようであるが,更に,健康問題に関係のあるいかさま医術だの,素人療法の実施に至つては,放つておけないものがあるように思えて来た.現在最も一般人の神経をなやましている病気,近代医学をもつてしても尚,成功の域に達していない癌や,高血圧などについても,医者が見放したものでも,忽ち治るという迷信から,いかがわしい液体をのまされたり,電気をかけられたりするというのだ.
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