講座
本当の差とみせかけの差—統計の生きた使い方(その15)
平山 雄
1
1国立公衆衛生院疫学部
pp.32-37
発行日 1955年9月10日
Published Date 1955/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201017
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1.はじめに
例えば,2つの集団の死亡率を比較するとき,その間に差異が認められるといつて,直ちに,それを本当の差と思いこむことは危険である.特に,それがわれわれの期待通りの方向に現われた差異であるときには,すぐその差異に意味をつけたくなる.例えば,一群には予め予防注射してある,他の群には注射していなかつたというようなときには,もし予防注射群の罹患率が非注射群の罹患率より低いという結果がでると,しめたと鬼の首をとつたように,すぐ,その結果が両群の真の差を現しているものと思いこみがちである.
そのような態度が,どのような誤まつた結論を生む危険性をはらんでいるか.それは,じつくりと反省してみなければならないことである.今回は,一見,本当の差のように見えても,実はみせかけの差に過ぎないという実例をいくつかあげて色々な角度から研究して見たいと思う.
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