講座
新入学児の健康上の注意
船川 幡夫
1
1国立公衆衛生院
pp.6-10
発行日 1955年3月10日
Published Date 1955/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200911
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1.子どもから大人へ
発育ということは,実は,寸秒も休みなくつづけられている生命の営みであつて,新生兒,乳兒,幼兒,更に学童といつた区分は,全く,大人の便宜上つけた分類であつて,少くともはつきりしたお互の間の境界はあろう筈はない.大人の世界は,えてしてこういう類別を作ることに依つて,責任の範囲を規定し,整然とした系統を作つてものを考えようとするが,これは案外に,子どもにとつては迷惑なことが多い.殊に,子どもの健康に関心をもつものにとつては,この区分が,邪魔だてをする事さえある.生理的なつながりをもつた子どもの発育の経過を,人爲的な尺度を以て切ることが,種々の行政的な,医学的な問題をみちびいている.勿論,大人の世界では,これらのことについて万全の対策を考えてはいるが充分とは云えない.
このように,境界の部分というものは,物理化学のような自然現象にても,又生物である子どもに於てもとり残きれた問題を藏していて,今日のように,子どもの保健状態の向上して来た時に於てすら,忘れられていた保健上の仕事の数々が発見される.入学前の年令は,実にかかる時代にあてはまるといえよう.
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