講座
ヒロポン中毒
關根 真一
1
1国立武藏療養所
pp.36-40
発行日 1954年3月10日
Published Date 1954/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200699
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ヒロポン所持,ヒロポン密造,ヒロポン中毒者の犯行などが殆んど毎日のように,新聞紙上を賑わしているのを見てもいかに社会にヒロポンが氾濫しているかが,想像できるのである.はじめは大都市に流行したのであるが,昨今では,農村漁村までもそのヒロポンの濁流がおしよせて,その害毒が多くの国民の内に浸透している状熊であることは,大きな社会問題であつて憂慮にたえない.
しかも青少年にその犠牲者を多く見ることは,日本の次の時代を背負う彼等だけに,問題は一そう深刻さを増すのである.この害毒という大きな洪水の氾濫は,戰後に於ける人心の不安定と弱さの隙をくぐつて浸透したのでその濁流のあまりに力強いために,防止することもできずに,今日の事態に立ちいたつたのであるが,このままに放置することは一刻も許されないので,先ずヒロポンの弊害を撲滅するには,世人一般がヒロポンの害毒の恐ろしさを確認して喰止め策講じなければならぬのである.
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