社会の動向
ヒロポン中毒と藥の週間
長谷川 泉
pp.60-61
発行日 1954年12月1日
Published Date 1954/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200760
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最近の朝日新聞の寸言欄に国策パルプ副社長水野成夫氏のヒロポン中毒者についての感想が載つていた.ベレー帽を買いに入つたら連れだつた若い青年に黄色いベレー帽を頭にのせられ,「おつさんよくにあうぜ」というようなやゆの言葉をあびせられたというのである.幸い店員の機転によつて,水野氏はそれが小使錢かせぎのポン中毒患者のいやがらせであることを知らされ,早々にそこを出て事なきを得たというのであるが,水野氏はその青年たちの眼のなかに亡国のまなざし,阿片吸入者の眼の色をよみとつているのである.そのような記述であつたように思う.
これは恐ろしいことである.盛り場の裏にはこのような惡の華が咲いている.表面ははなやかな美しいよそおいをしているだけに一歩その奧にふみ込んだ光景は陰慘な,それこそ亡国の眼というにふさわしいような,その日その場限りの陶醉感に,よつぱらつた存在がいるのである.
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