園藝
バラの話
六條 雅彙
1
1東京大学醫学部田坂内科
pp.60-61
発行日 1953年6月10日
Published Date 1953/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200538
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5月になると澄んだ青空の下で色とりどりに薫高くバラの花が咲き始めます。古くローマの昔より人々に愛され,數々のロマンスを生み,イギリスの国花としても又史上バラ戰爭等でも有名なバラは我が国でも最近は非常に愛される樣になりました。どこのデパートでも沢山のバラの苗が賣られ,東京その他の大都市では春秋にバラの展覧会が開かれ,いつも沢山の人を樂しませてくれます。ここでは皆樣がバラを作られる場合の参考としてバラの種類を中心に述べましよう。昔作られていたバラの花は現在のものと形も大分異なり,只春に1回咲くばかりでしたが,ナポレオンの時代の頃より主としてフランスで改良され,現在みられる四季咲のバラは1867年に始めて一世に紹介されました。現在では黄色のバラはそう珍らしくもありませんが,50年も前には夢にも想像されなかつたことなのです。もつとも原種で小さな黄色の花があつたのですが,見ばえがせず,その上惡臭があつたりして一般には作られなかつた樣です。それが今日では改良に改良を重ねられて,花の大きさも4〜5分の少さい品種ゐり5寸以上にもなる巨大輪の品種もあります。花色も紅,赤,白及び黄はもとより,その濃淡,複色殆んどあらゆる色がありますが紫色系統は少く,青い色はありません。
昔よりブルーローズ(青いバラ)という言葉は望みなきことの代りに使われております。珍らしい色では灰色のグレーパール,緑色のビリヂフロラスという種類があります。
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