主張
誕生日
pp.33
発行日 1951年7月10日
Published Date 1951/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200110
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たつた1本のローソクが可愛いきれいなお菓子の上にたつて,ユラユラと焔がゆらいでいます。小さな焔をめぐつて見える澤山の眼,眼,眼,其の中にも一きわ輝やきをみなぎらせたあいくるしい眼,それはこのお菓子の贈られ主,今日のお誕生日の主人公,坊やの眼です。生れて滿1年,明るさも,暗さも痛いのも痒いのも何にも解らず機械的に生活しはじめてからのこの1年の見事な成長ぶりを家中でよろこび祝福する特別のこの誕生日,あちこちから,皆から一番よろこんでもらうお祝いの日。世界中の人が祝いなつかしむこの日。誕生日を祝う習慣が特にない日本でもこの最初の誕生日だけは家中のお祝いの日で,親類縁者,友人にもよろこびを分つ日になつています。西洋では其れ以後毎年繰り返して祝います。貧しくて,何一つ持たない人でも,誕生日だけは必ず人並に持つています。そして自分で自分の生涯を省み,希望の焔を胸にもやすことが出來るのです。子供の頃の習慣で大人になつてから餘り親しまないものもありますが,何時までも,いくつになつてもいゝものは誕生日,年をとればとる程なつかしく,親しい誕生日を祝う習慣は,それが西洋の習慣であつても,いゝことなのだから眞似したいし,私達のゆかしい習慣に加えたいと思います。
生涯の中に何度誕生日を祝うことが出來るでしよう。戰前と戰後では,日本人の平均壽命が10年以上も長くなつています。
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