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ケースワーク—先ず相手の話をきいてから
大畠 たね
1
1總司令部公衆衞生福祉部
pp.38-40
発行日 1951年4月10日
Published Date 1951/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200070
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これはある若い保健婦が,療養所に入る必要のある患者を取扱つて得た體驗である。取扱い初期の苦い經驗をとおして人との關係で大切な眞理を學んだが又これはケースワークの理論を實際に行つたものである。この体驗をわかちあう事により,同じ樣な失敗が繰返されない樣に,何かの御役にたてば幸いである。ケースワークは社會事業家に獨専される技術ではなくその應用される分野はひろいのである。
保健婦の山田さんは,奧野善子さん(20)が開放性結核のため,療養所に入ることを醫者からすゝめられたが,容易に決心がつかず,日あたりの惡い6疊1間のアパートで家族5人暮し,又患者は時々映畫にいつたり,勤めにもでかけることを知ると,本人の爲は勿論,公衆衞生の立場からじつとしてはいられなくなつた。その結果,1週間に1度は家庭訪問をして,病氣の性質,早期治療と公衆保護の必要から療養所人所を熱心にときすゝめ,本人や家族の病氣に對する誤つた考えを指摘した。あまりこれが度重なると,奧野さんでは山田さんを避けるようなり,目的に向つて進んでいない事に氣がついた。そこで山田さんの氣のついたことは,今迄自分の考えを相手におしつける丈で,患者や其の家族が結核をどう老化ているか,療養所や,療養所へ行くことをどう思つているか,又自分が家族の立場にたつてこの家族の問題を相談したことがなかつたことである。
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