扉
話のきき方
pp.7
発行日 1956年7月15日
Published Date 1956/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910139
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人の話をきくのにも,種々のきき方があると思います。ただ面白おかしく漫然と話し合つているのなら,それでもよいのですが,少し改まつて,身をいれてきくということになると,何か,効果的なきき方をした方がためになると思います。そこで,きき方の一つであるところの,「メモをとつて聞くきき方」について考えてみましよう。
新聞や雑誌の記者が人と面接して話を取つてくる時には,必ず,ちやんとメモをとつています。これによつて,後でその話を再現して記事にするためなのです。このように記事にするためではなくても,学生はノートを取つて講義をきくことが普通のようにしています。私の友人に,人の話を非常に注意深くきく人があります。この人は,「話し方」の研究をしている人で,上手に話すこつや,人にわかり易く話す方法について大そうよく勉強し,研究している人です。この人が,人の話をきく時に,時に小さなノートを出して書きとめています。何を書きとめているのかきいてみましたら,「面白い言葉ずかい」や「気の利いた表現」又は,数字や人とか場所とかの名前を書きとめているということでした。こうして書きとめた材料を,次に自分が話をする時に活用して,その話の内容を深めたり,面白くしたりするのだということでした。「メモ」をとるには,話の中味をよくつかむために,「要点を落さず記す」という程度が一番よいので,一言一句もおとさずにとるようなのは,「取りすぎる」のです。
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