バリント方式による患者理解・5
狭心痛のかげには
永田 勝太郎
1
1北九州市立小倉病院内科
pp.581-584
発行日 1983年5月1日
Published Date 1983/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922958
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狭心症の疑いのある婦人の入院
S夫人は58歳のしゃれた感じの女性です,2年前の11月,初冬の寒い朝,ふさぎこんだ顔で外来に姿をみせました.彼女の主訴は胸痛です.寒風吹きすさぶ巷(ちまた)を歩くと胸痛が起こり,そのために歩けなくなるということでした.そのうち夜間,とくに明け方,胸痛で目が覚めるようになりました.
さっそく心電図(マスター・ダブル負荷試験)をとりました.運動負荷により一部の誘導のSTが有意に下がり,労作性狭心症を示唆する所見を得ました.しかし,彼女の訴えを聞くと,安静時狭心症も否定できません.安静時狭心症は,心筋梗塞に移行することが多いので注意を要します.また彼女には,高脂血症(高コレステロール血症,高中性脂肪血症)があり,喫煙の習慣(1日20本),肥満(155cm,68kg)もあり,心筋梗塞の危険因子がそろっています.当院のベッドが空くのを待って入院となりました.
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