死への看護・4
よき聞き手の条件—3人の末期患者の例を通して
柏木 哲夫
1
1淀川キリスト教病院精神神経科
pp.393-397
発行日 1977年4月1日
Published Date 1977/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922645
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はじめに
‘死への看護’の中で重要な位置を占めるのは,患者の精神的必要に対する配慮です.その中でも,患者の‘孤独’と‘死への不安’に対して看護側がどのようなケアができるかがその中心になります.というのは,この孤独と不安は死にゆく患者の共通の心理であるからです.どれほど親身に,献身的に尽くしてくれる家族があっても,死に直面した患者は孤独です.どれほど教養を積んだ人でも,死への不安は耐え難いものです.まして,面会に来てくれる家族も友人もない末期患者にとって,この孤独と不安はなお一層耐え難いものです.
このような患者にとって,何よりも必要なのは話を聞いてくれる人です.それも患者の必要を満たそうと,積極的な関心を持って聞くこと(active listening)ができる人です.このactive listeningを続けることによって,患者との間に配慮的人間関係(caring relationship)をつくり,それを通して,患者の孤独と不安に対するケアをしていくわけです.このような,患者に積極的に耳を傾けることのできるスタッフを育成し,支持していくのもチームの大きな働きの1つです.患者の精神的必要に対してなされたチームの働きを,3人の末期患者を通して紹介します.
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