連載 高齢化社会の福祉と医療を考える・27
老婆心と“世話焼きばっば”
木下 康仁
1,2
1立教大学社会学部
2(財)日本老人福祉財団
pp.1126-1129
発行日 1988年11月1日
Published Date 1988/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922137
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◆気になる老婆心という言葉の解釈
老婆心という言葉は,今では死語に近くなったようである.若い人で知っている人は少ないだろうし,年長の人たちも最近は使わなくなったのではないだろうか.以前は日常語として,「余計なことかもしれませんが……」とか,「差し出がましいようですが……」といった意味で用いられていた.つまり,本来は自分の口出しすべきことではないかもしれないが,一歩下がったところから助言,忠告などをする時に,前置き的にこの言葉を使っていた.
字のごとく老婆心とは,年老いた女性の心ということになるのだが,それがなぜ一種のへりくだり表現になったのだろうか──私は全く素朴にこうした疑問を持って考え始めた.そして,この言葉には,私たちが忘れてしまったかなり重要な意味があることに気付いたのである。そこで今回は,このことについて述べてみたいと思う.
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